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一回 二回 何十回 何千日


「ところが、この誠に恐るべき存在である海に立ち向かって工事をしなければならない人間のほうは、誠に不確かな存在である。人間は常に間違いを犯すし、いかに優れて沈着冷静な人間でも、常に沈着冷静でいられる保証はない。人間は ときに人間離れした精神力や器用さを発揮することもがあるが、そんなものが強大で非情な海に常に通用するはずがない。」

「海中土木技術」杉田秀夫著 1994年 山海堂

★瀬戸大橋をつくった男

杉田秀夫氏(1931-1993)は旧国鉄をへて、日本鉄道建設公団から本州四国連絡橋公団で所長として架橋工事の現場第一線で陣頭指揮にあたり、「瀬戸大橋をつくった男」などの本や、テレビドラマ、プロジェクトXなどで紹介され、海洋の架橋工事に大きな功績を、残されている。

生前 杉田秀夫氏は橋は決して土木技術だけで出来たものではないと言っていた。
杉田氏は土木技術者であるが、橋は、色々な分野の技術が結集して出来ているので、決して自分だけの技術ではなく、裾野の周辺分野の技術の拡がりの重要性を殊更 強調されていた。

こうした 謙虚さを もたれているのは 懐の深い 海という大自然を相手に 日夜 苦闘されてきた 苦労の末に体得された結果ではなかったと 想像でき出来るのである。

★荒川放水路 十五年間

杉田秀夫氏は 、「昭和37年、土木学会が明石で架橋調査を行ったときの、原口忠次郎氏(元 神戸市長 内務省出身)の言葉が 二十七年後の今も 耳に残っている」と瀬戸大橋が完成した昭和六十三年 に言っておられれた。

原口忠次郎氏は 戦前 内務省で その当時の大事業である荒川放水路の工事を15年間にわたり 携わり、毎日毎日 川と向かい合って 苦闘し続けて 「十五年間でようやく川の心が わかるような気になった」という。

この原口忠次郎氏の言葉が ずっと耳に残っていると 杉田秀夫氏は 聞いてから27年後に
述懐された。

杉田秀夫氏は 瀬戸大橋の海中基礎の工事で十年間 日夜 苦労され 10年間で海の何たるか 少しづつ わかりかけたが、それでも 百分の一しかわからなかったのが 百分の二程度になった程度で、海の全ては決してわからない。
自然は 尽きない 奥の深さを持っている と思う、と発言されていた。
  
 自然を相手に 苦労すればするほど 自然の奥深さを つくづく感じるのである。

原口忠次郎氏の荒川放水路十五年間、 杉田秀夫氏の瀬戸大橋 十年間、 ともに自然の奥深さを つくづくわかる 謙虚さを この賢人達は持ちあわせていた。

苦労の末 自然の奥深さを 体得したといっても良いのだろう。

★六十日が四十五年 佐伯郁夫様

「私は、年間60日ぐらいの山行を重ねて45年になる。それでも未知の分野・体験できない領域が果てしない。だからこそ、生涯汲めども尽きぬ永遠のテーマを与えてくれる山登りと取り組んで行くことが出来る。登山という趣味を得たことに幸せを感じている。」
 佐伯郁夫 

「とやま山ガイド 10ジャンル100コース」
佐伯郁夫・佐伯邦夫著 1996年 株式会社シー・エー・ピー

★ 一回 二回でなく  何十回でもなく 何千日でも

その山を 一回登ったとか 二回の登ったとかで その山の全てを登り尽くしたと感ずる人がいるかもしれないが、 たとえ 同じ山を何十回 何百回登ったとしても 山の 奥深さがそう簡単に分かるのものでないと思う。

山は高さに関係なく 低くても そんな程度で 極められるほど 自然は簡単ではない。

晴れの時 雨の時 雪の時 春夏秋冬 それでも 毎年毎年 違った顔を見せ続ける。
朝昼晩。時々刻々 変化し そのたびに 新たな場面に出会うほど 山は 奥深いものである。

自然と対峙するということは 何千日も毎日毎日 苦闘された 方が 十五年でやっと川の心がわかりかけたとか、
十年でやっと 百分の1から百分の2になるくらいの レベルの話なのである。

四十五年間 二千七百日でも 果てしない未知のテーマをあたえてくれる山。

私など 過去の山行を振り返ってみても まだまだ お恥ずかしい限りで 山の何たるかも まだまだ分からない状態で とても 奥は果てしなく 果てしなく 未知の山が続く状態なのです。

杉田秀夫論文集-論文・遺稿・講演・メモ−


杉田秀夫論文集-論文・遺稿・講演・メモ−


平成16年9月7日 第一版
平成21年1月27日更新

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